クマスプレーをもつときの安全管理

12月になりましたね。

私たちが普段活動しているフィールドも、雪化粧が施されているみたいです。そろそろ雪合戦できるかな。

 

さて、本日、東海道新幹線の車内で、クマスプレーが誤って噴射された出来事がありました。登山帰りの方の持っていたクマスプレーに何らかの衝撃が加わった結果発射された可能性があるみたいですね。

 

私たちツキノワグマ研究会のメンバーも、踏査にはクマスプレーを携帯しています。高価な品ですので、全員が持っているとは限りませんが、1集団に少なくとも1本は配分されるように踏査班を編成しています。そして、初めて貸与する際には、クマスプレー本体の説明と使用方法、危険性を伝えるように心がけています。クマスプレーの成分は、辛み成分です。それは人が食べるものの比ではなく、少量でも噴射されると長時間のダメージが発生します。まあ、クマにも効く代物ですので、刺激が弱いわけがないのですが…

ですので、クマスプレーには安全装置があります。発射するためのトリガーを引けないように、ストッパーを差し込める仕組みです。私たちの使うクマスプレーの場合、差込口はギザギザになっているので、簡単には外れないと思います。さらに、クマスプレーを専用ホルダーに入れると、トリガー周辺を覆ってくれるため、トリガー周辺に触れにくくなります。このように、複数のガードの仕組みがある、つまり使用するにはいくつかの動作が必要になるということです。ホルダーのロックを外す→クマスプレーを取り出す→トリガーストッパーを外す→クマに向けて発射する、です。

この動作ですが、警察官の持つ拳銃に似ていると思いませんか?ホルスターから拳銃を取り出す→安全装置を外す→発射、と考えると、例としては中らずと雖も遠からずではないでしょうか。もっとも、警察官の場合は「ホルスターに手をかけ警告」や「拳銃を向けて警告」の動作があると聞いたことがありますが…

何が言いたいかというと、

・クマスプレーを取り出す=拳銃を取り出す=警戒態勢

・トリガーストッパーを外す=安全装置を外す=身に危険が迫っている

・発射する=最後の手段

とすると、そもそもクマスプレーに触れること自体が「危険な状態」を示しているのです。ならば、特に危険でない状況、例えば新幹線の駅ならどうでしょうか?

もちろん、触れる必要はありませんよね。むしろ触れられない、触れてはいけない状況ではないでしょうか。クマスプレーが必要ではない場所では、不用意に触れることはあってはならないと思います。他人が触れることのないよう、バッグの内側などにしっかり収納することが必要でしょう(もちろん、全ての安全装置をかけた上です)。万が一の事故を防ぐためです。それくらい、クマスプレーは危険性を伴っているものとの認識を、クマ研メンバーはもちろん、今度使用される方々には持っていただきたいと思います。